狂犬病ウイルス感染症

狂犬病ウイルス感染症とは?

狂犬病は、人が発症すると、100%死に至る非常に恐ろしい感染症で、人獣共通感染症(ズーノーシス:Zoonosis)でもあります。この病気は、狂犬病ウイルスの感染によりおこり、主に神経症状を示し、感染した犬の約8割ほどが狂乱状態となって手当たり次第に咬みつくようになり、感染が拡がることから日本ではこの病名になっています。ですが、日本では狂犬病という名前から、犬だけの病気だと勘違いされていますが、犬だけでなく、猫、アライグマ、イタチ、狐、ネズミなどすべての哺乳類に感染する危険な病気です。
2006年にフィリピンで犬に噛まれた日本人男性2人が狂犬病を発症し、死亡しました。これは国内では36年ぶりの狂犬病発症例となりますが、全世界では今なお、狂犬病は広く分布しており、毎年3万5000〜5万人が狂犬病の感染により亡くなっていると言われています。2006年には中国各地でも狂犬病の流行がみられ、7月には中国全土で237人が狂犬病を発症し死亡したとの報告もあります。また、お隣である台湾も長らく清浄国でしたが、2013年野生動物で狂犬病の発生が認められました。この発生を受け、農林水産省は台湾を非清浄国として扱うこととなりました。
日本でも狂犬病予防注射の接種率が低下し、いつまた国内で感染が広がってもおかしくないと言われています。万が一、日本国内で発症がみられた場合にも流行を防ぐことが出来るよう、飼主の義務として狂犬病予防注射は必ず接種すべきです。

狂犬病ウイルス感染症の原因

狂犬病はラブドウイルス科リッサウイルス属に属する狂犬病ウイルス(Rabies Virus)の感染によって起こります。この狂犬病ウイルスは、人を含む総ての哺乳類に感染し、ウイルスは感染した動物の唾液(よだれ)中に大量に存在し、主に感染した動物に咬まれれたり、噛まれなくても傷口などを舐められて唾液が付着することでも感染が起こります。ウイルスは侵入した部位から末梢神経、脊髄、脳へと広がり、中枢神経障害を引き起こします。

狂犬病ウイルス感染症の症状

犬の狂犬病の潜伏期間1週間から1年ほどで、平均1ヶ月ほどと言われています。
症状はまず、前駆期と呼ばれる初期に発熱や食欲不振などが起こります。また、暗い場所に隠れたり、これまでフレンドリーだった犬が近寄らなくなったり、逆に攻撃的だった犬が従順になったりと普段と異なる行動変化が見られることもありますが、この時点では他の病気とあまり区別がつきません。
この後、狂躁(きょうそう)型と麻痺(まひ)型と呼ばれる2つに分かれます。狂躁型が80~85%で、麻痺型15〜20%とされています。
狂躁型の場合、異常に興奮して吠えたり、攻撃したり、手当たり次第に噛み付いたりとまさに狂犬の症状が見られます。この狂躁期は2~4日ほどと言われてます。その後、運動失調や痙攣、嚥下困難、昏睡などの麻痺症状が訪れ衰弱して1~2日で死亡します。
麻痺型では初期から急激に麻痺症状がみられ、数日で死亡します。
人の潜伏期間は一般的には1〜2ヶ月と言われ、初期は頭痛・発熱などカゼに似た症状で、他の病気と区別がちきません。その後、麻痺・精神錯乱・咽頭部痙攣により恐水症状(水を飲むと喉が痛いため、水を飲むことができない状態)などの神経症状が現れ、数日で呼吸停止を起こし死亡します。狂犬病は一度発症すれば致死率はほぼ100%と言われ、まず助からない怖い病気です。

狂犬病ウイルス感染症の診断/検査

狂犬病ウイルスは感染してから発症するまでに平均1ヶ月の潜伏期間があり、感染した動物でも潜伏期間は症状を全く示さないため、ウイルスを検出することもできず不可能です。
確定診断を行うには死亡後に脳の組織から特殊な検査で行うしかありません。 人も動物も症状が出た時点では手遅れです。

狂犬病ウイルス感染症の治療

狂犬病は発症する前に診断することは難しく、発症すれば有効な治療法はなく、死亡率はほぼ100%です。また、狂犬病は人の公衆衛生上大変危険なため、疑いのある動物は隔離され、発症した動物の治療は人間への危険性から治療は行われず、関係当局へ連絡の後、案楽死が選択されます。その後、脳の組織から検査を行います。
人の場合も発症したら特別な治療法今のところありません。ただ、狂犬病の疑いのある動物に咬まれた場合、発病する前に発病予防のワクチンを接種することで発症を防ぐことができる場合もあります。

狂犬病ウイルス感染症の予防

狂犬病の予防には、ワクチン接種が有効です。日本では、狂犬病予防法によって生後91日以上の犬に年1回のワクチン接種が義務づけられています。日本は世界でも数少ない狂犬病の清浄国です。年に1回は必ず狂犬病のワクチンを愛犬に接種しましょう。これは飼育者としての義務です。狂犬病予防注射を未接種、お忘れの場合は当院にご相談ください。
狂犬病予防法
※生後91日以上の犬を飼う場合、飼い始めてから30日以内に市区町村に登録の手続きが必要です。また、毎年1回必ず狂犬病予防注射を受ける義務があります。

狂犬病ウイルス感染症の看護/その他

狂犬病の国内での動物の発症例は昭和32年以降見られませんが、インド、中国や東南アジアでは依然猛威をふるっていて、世界中で毎年約5万人もの人が狂犬病で亡くなっています。2006年にはフィリピン滞在中の日本人男性が犬に咬まれ、帰国後に発症して死亡しました。 万が一、狂犬病に感染した動物あるいはその疑いのある動物に犬が咬まれた場合は、速やかに動物病院を受診し、直ちに狂犬病ワクチンを再接種します。その後、経過観察を行います。ただし、ワクチン未接種の犬では安楽死が勧められることもあります。
人が狂犬病の動物に噛まれた場合は、すぐに(人間の)病院を受診し、ワクチンを数回打つことで発症が予防できることもあります。発症した後では効果はありません。ほぼ100%死に至ります。
愛犬が狂犬病になった場合、最も危険なのは飼育者であるあなたです。きちんと予防注射を受けていれば確実にこの怖い病気を予防できます。