うちの子のフシギ Vol.07:犬はどうして首をかしげるの?

「お散歩行く?」「ごはん?」「ボール持ってきて!」

犬に話しかけたとき、
「ん?」というように首を左右どちらかへかしげることがあります。

とてもかわいいこの仕草。
いったい犬は何をしているのでしょう?

実は近年の研究から、
人の言葉に注意を向け、その情報を処理しているときに
首をかしげる可能性
が示されています。

犬の「首かしげ」を調べた研究があります

2021年に発表された研究では、
家庭で暮らす40頭の犬を対象に、
飼い主が犬に「名前を覚えたおもちゃ」を持ってくるように
言葉で指示したときの行動が調べられました。

研究に参加した犬の中には、
おもちゃの名前を学習する能力に特に優れた犬たちがいました。

すると、おもちゃの名前を学習していた犬では、
飼い主からその名前を聞いたときに
首をかしげる行動が頻繁に観察されたのです。

「何て言ったの?」と聞いているの?

私たちから見ると、
犬が首をかしげる姿は、
まるで「何て言ったの?」と考えているように見えます。

研究者たちは、首をかしげる行動が
犬にとって意味のある、あるいは重要な音声情報への注意や
情報処理と関係している可能性
を指摘しています。

例えば「ボール」という言葉を知っている犬なら、
その音を聞いたときに、
記憶しているおもちゃの情報と結びつけている可能性があります。

ただし、
「犬は言葉の意味を考えるために必ず首をかしげる」ことが
証明されたわけではありません。

現在の研究から言えるのは、
首かしげと、犬にとって意味のある情報への注意・処理との間に
関係がある可能性が示されている、というところです。

実際、どのくらい首をかしげたの?

この研究には興味深い結果があります。

2つのおもちゃの名前を学習する実験では、
おもちゃの名前を覚えることが得意だった犬たちは、
飼い主からおもちゃを持ってくるように言われた試行の
約43%で首をかしげました。

一方、一般的な犬のグループでは、
首かしげが見られたのは約2%でした。

つまり、この実験では単に人の声を聞いただけではなく、
その犬にとって意味を持つ言葉を聞いたことが
首かしげと関係していた可能性があります。

右?左? 実は犬によってクセがある

さらに面白いことがあります。

首をかしげる方向は、
飼い主さんが犬の右側にいるか左側にいるかでは
説明できませんでした。

しかも、頻繁に首をかしげた犬では、
右にかしげやすい犬、左にかしげやすい犬という
個体ごとの傾向が数か月にわたって比較的安定していました。

どうして方向に個体差があるのかについては、
脳の情報処理の左右差などとの関連も考えられていますが、
まだ十分には分かっていません。

「音をよく聞くため」という説は?

「犬は音の方向を確かめるために首をかしげる」
と説明されることもあります。

もちろん犬にとって音の位置を知ることは重要ですが、
少なくとも先ほどの研究では、
飼い主さんが犬のどちら側にいるかと
首をかしげる方向との関連は認められませんでした。

そのため、私たちが日常的に見る首かしげを
単純に「音源を探しているだけ」と説明することもできません。

すべての犬が首をかしげるわけではありません

ここも大切なポイントです。

よく首をかしげる犬もいれば、
ほとんどしない犬もいます。

したがって、
首をかしげないから飼い主さんの話を聞いていない、
あるいは言葉を理解していない、という意味ではありません。

犬は耳の動き、視線、顔の向き、姿勢など、
さまざまな方法で人や周囲から情報を集めています。

ただし「ずっと首が傾いている」ときは別です

ここまで紹介した首かしげは、
飼い主さんの声などに反応して一時的に
「コテン」と首をかしげる行動です。

一方、
何もしていないときにも頭が一方向へ傾いたままになっている場合は、
同じ「首をかしげる」ように見えても意味がまったく異なります。

持続する頭部の傾き(head tilt)は、
前庭系の異常をはじめとした神経学的な問題などで
見られることがあります。

急に頭が傾いたままになった、
まっすぐ歩けない、ふらつく、眼が揺れる、ぐるぐる回る、
吐き気や嘔吐を伴う――
といった場合には、かわいい「首かしげ」とは区別して、
壱岐動物病院へ相談してください。

まとめ

犬が話しかけられたときに見せる「首かしげ」。

まだ完全に理由が解明された行動ではありませんが、
研究からは、
犬にとって意味のある言葉や情報に注意を向け、
処理していることと関係している可能性
が示されています。

ですから愛犬が「お散歩行く?」の一言に
コテンと首をかしげたら、
本当に私たちの言葉に注意を向けているのかもしれません。

ただし、そのかわいい仕草の意味は、
まだすべてが分かっているわけではありません。

そんな「まだ分からないところ」も、
犬と暮らす面白さのひとつなのかもしれませんね。


参考文献

  1. Sommese A, Miklósi Á, Pogány Á, Temesi A, Dror S, Fugazza C.
    An exploratory analysis of head-tilting in dogs.
    Animal Cognition.
    2022;25(3):701–705.
    doi:10.1007/s10071-021-01571-8.


※犬のhead-tiltに関する研究はまだ限られています。
特に上記研究で頻繁な首かしげが確認されたのは、
物の名前を学習する能力に優れた少数の犬が中心です。
そのため、結果をすべての犬の首かしげに
そのまま当てはめることはできません。

この記事を書いた人

福山達也