うちの子のフシギ Vol.14:猫はどうして高いところが好きなの?

キャットタワーのいちばん上。
本棚や食器棚の上。
ときには「どうやって登ったの?」と思うような
高い場所にいる猫。

飼い主さんが見上げると、
猫はそこから部屋を眺めながら、
何とも満足そうな顔をしていることがあります。

「どうして、わざわざそんな高いところへ?」

実は猫にとって、
高さのある場所を利用できることは、
暮らしやすい環境を考えるうえで大切な要素のひとつ
です。

猫にとって高い場所には、
どんな意味があるのでしょう?

猫は「平面」だけで生活しているわけではありません

私たちは部屋を見るとき、
つい床の広さを基準に考えてしまいます。

しかし猫にとっては、
床だけでなく、
棚や家具、窓辺、キャットタワーなどの
上下方向の空間も生活場所になります。

つまり猫の生活空間は、
「何畳あるか」という平面的な広さだけでは
評価できません。

高い場所へ登ったり、
異なる高さの場所を移動したりできる
垂直空間も、
猫の環境を豊かにする重要な要素です。

高い場所は周囲を確認しやすい

高い場所にいると、
猫は周囲の様子を見渡しやすくなります。

人がどこにいるのか。
ほかの猫や犬がどこにいるのか。
部屋の中で何が起きているのか。

自分からすぐ近づかなくても、
少し離れた場所から周囲を観察できます。

これは、周囲の状況を確認しながら
自分の行動を選ぶうえで役立つと考えられます。

そのため高い場所は、
単なる「展望台」ではなく、
周囲との距離を調整できる場所
としても利用されます。

「隠れる場所」と同じように大切なことも

Vol.02では、
猫が段ボール箱などの狭い場所を好む理由について紹介しました。

猫にとって、
周囲から少し距離を取って休める場所を持つことは重要です。

その方法は「箱の中に隠れる」だけではありません。


高い場所へ移動して距離を取ることも、
猫が自分で選べる行動のひとつです。

低い場所の隠れ家と、
高い場所の休息場所。

どちらか一方ではなく、
猫が状況に応じて好きな場所を選べる環境が理想的です。

高い場所にいるのは「偉い猫」だから?

「高いところにいる猫ほど順位が上」
と説明されることがあります。

しかし、猫同士の関係を
単純な上下関係だけで説明するのは適切ではありません。

猫がどの場所を選ぶかには、
その場所の安全性、温度、周囲の状況、
他の動物との関係、休みやすさなど、
さまざまな要因が関係します。

したがって、

「高い場所にいる=その猫がいちばん偉い」
と判断することはできません。

多頭飼育では「逃げ道」と「選択肢」が重要

複数の猫が暮らしている家庭では、
垂直空間はさらに重要になります。

猫同士がいつも密着して過ごしたいとは限りません。

仲良く見える猫同士でも、
ときには一頭で休みたいことがあります。

そんなとき、
床だけでなく高い場所にも移動できれば、
お互いの距離を調整するための選択肢が増えます。

ただし、キャットタワーをひとつ置けば
それだけで十分とは限りません。

特定の猫が通路や高い場所を占有すると、
別の猫が利用しにくくなることもあります。


複数の場所、複数の高さ、
そして複数の移動経路を用意すること

がポイントです。

「登れる」だけでなく「安全に降りられる」ことも大切

高い場所を作るときには、
高さだけを考えないようにしましょう。

大切なのは、
安全に登れて、安全に降りられることです。

キャットタワーや棚は、
猫が飛び乗ってもぐらつかないよう
しっかり固定しましょう。

また、高い場所から降りるときに
途中で使える棚やステップがあると、
一度に大きくジャンプする必要がなくなります。

特に高齢猫や関節に問題のある猫では、
若いころと同じ高さまで一気に跳べなくなることがあります。

高齢になったら「高さをなくす」のではなく工夫を

年齢を重ねると、
「最近キャットタワーに登らなくなった」
「以前は冷蔵庫の上まで行っていたのに」
という変化がみられることがあります。

これは単に
「高いところが好きではなくなった」
とは限りません。

関節の痛みや筋力の低下などによって、
高い場所へのアクセスが難しくなっている可能性もあります。

そんなときは、
好きだった高い場所をすべてなくすのではなく、

  • 途中に低いステップを追加する
  • 家具を段階的に配置する
  • 滑りにくい素材を使う
  • 低めのキャットタワーを用意する
  • 登り降りしやすいスロープを利用する

などの工夫によって、
猫がこれまで好きだった場所を
引き続き利用できる場合があります。

窓辺の高い場所も人気です

猫がよく利用する場所のひとつが、
窓の近くです。

窓辺では外を眺めたり、
光や外の動きを観察したりできます。

高さのある窓辺に安全な休息場所を作ることは、
室内猫の環境を豊かにする方法のひとつです。

ただし、
窓や網戸からの転落・脱走には十分注意してください。

「猫だから高いところから落ちても大丈夫」
というわけではありません。

高い場所が好きではない猫もいます

ここも大切なポイントです。

「猫は高いところが好き」といっても、
すべての猫が同じではありません。

床に近い場所を好む猫もいれば、
箱の中を好む猫、
飼い主さんのそばを好む猫もいます。

年齢、性格、身体状態、
これまでの経験や家庭環境などによっても
好みは変わります。


「猫なら高い場所へ登るはず」と考えるのではなく、
その猫がどこでリラックスしているのかを
観察することが大切です。

こんな変化には注意して

以前は高いところへ軽々と登っていた猫が、
急に登らなくなった場合には注意が必要です。

特に、

  • ジャンプする前に何度もためらう
  • 以前より低い場所しか使わなくなった
  • 高いところから降りるのを嫌がる
  • 階段の上り下りを嫌がる
  • 歩き方がぎこちない
  • 毛づくろいが減った
  • 触られるのを嫌がるようになった

といった変化があれば、
関節や筋肉などに痛みがないか確認することも大切です。

猫は痛みを分かりやすく表現しないこともあるため、

「登らなくなった」という生活上の小さな変化が、
体調変化に気づくきっかけになることがあります。

おうちでできる「猫目線」の環境チェック

一度、猫の目線になって部屋を見てみましょう。

「床面積」だけではなく、

  • 安心して登れる場所があるか
  • 一頭で休める高い場所があるか
  • 安全に登り降りできるか
  • 途中で休める場所があるか
  • ほかの猫に邪魔されず移動できるか
  • 高齢になっても利用できるか

を確認してみてください。

大きな家でなくても、
壁面や家具の配置を工夫することで、
猫が利用できる空間を増やすことができます。

まとめ

キャットタワーや棚の上から、
私たちを見下ろしている猫。

高い場所は、
猫が周囲を観察したり、
他の動物や人との距離を調整したり、
安心して休んだりするために利用できる
大切な空間のひとつです。

大切なのは、
「高い場所を作ること」だけではありません。


高い場所、低い場所、隠れられる場所など、
猫自身がそのとき快適な場所を
選べる環境を作ることがポイントです。

愛猫がいつもどこでくつろいでいるのか、
今日は少し「猫目線」でお部屋を眺めてみませんか?


参考文献・ガイドライン

  1. Ellis SLH, Rodan I, Carney HC, et al.
    AAFP and ISFM Feline Environmental Needs Guidelines.
    Journal of Feline Medicine and Surgery.
    2013;15(3):219-230.
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  2. Ellis SLH.
    Environmental enrichment: practical strategies for improving feline welfare.
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  3. Rochlitz I.
    A review of the housing requirements of domestic cats
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    Applied Animal Behaviour Science.
    2005;93(1-2):97-109.
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    AAFP and ISFM Feline-Friendly Handling Guidelines.
    Journal of Feline Medicine and Surgery.
    2011;13(5):364-375.


※猫が好む場所や高さには個体差があります。
高い場所を利用しなくなったことだけで病気と判断することはできませんが、
以前できていたジャンプをためらう、動きがぎこちない、
触られるのを嫌がるなどの変化を伴う場合には、
動物病院へご相談ください。

この記事を書いた人

福山達也