ぶどう中毒:Grape Toxicosis

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ぶどう中毒とは?

 犬はブドウやレーズン、スグリ、サルタナを食べると、中毒症状を起こすことがあります。これをブドウ中毒(ぶどうちゅうどく)とかブドウ・レーズン症候群とかいい、最悪の場合、死に至ります
 ぶどう中毒は生の葡萄だけでなく、乾燥したレーズンや果汁100%のブドウジュース、ブドウの搾りかすなどでも起こりますので注意が必要です。もちろんブドウの果実だけでなく、ケーキ、パンやパイ、サラダなどに使われることも多いのできをつけてください。

ぶどう中毒の原因

 ブドウやレーズンなどに含まれる何らかの物質による中毒であることは予想できますが、今の所はっきりとした原因物質は特定されていません。また、中毒が現れる量は犬によって異なり、同じ量を食べても症状が出ない犬もいれば、死亡してしまう犬もいますので、個人差が激しいく予測できません。
 中毒量は、ぶどうで体重1kgあたり19.6~148.4g、レーズンで2.8~36.4gと報告されています。ですから、生のぶどうよりもドライフルーツにしたもののほうが危険です。報告では、8kgほどの犬がわずか4~5粒のブドウを食べて死亡したという例もありますので、個人差が激しく注意が必要です。

ぶどう中毒の症状

 ブドウ中毒の主な症状は急性腎不全に関連しています。そのため、元気消失食欲不振や廃絶、嘔吐(ほぼ必ず起こると報告されています)、吐血、下痢、血便、腹痛、乏尿、無尿、血尿、口の中の潰瘍、痙攣などが起こります。そして、これらの症状はブドウを摂取して6〜24時間以内に起こるとされていますので、一つの目安になります。
 特にぶどう中毒における、嘔吐とそれに続く急性腎障害による乏尿、無尿は24~48時間以内に起こるとされていますので、注意が必要です。

ぶどう中毒の診断/検査

 一般に、問診、身体検査はもちろん、血液検査血液化学検査尿検査レントゲン検査超音波検査などを行います。
 特に急性腎障害が起こるため、血液検査での腎機能(BUN、クレアチニン)の測定は欠かせません。

ぶどう中毒の治療

 解毒剤はいまのところありませんので、まずは、摂取して時間が経っていなければ体内に吸収される量を少しでも減らすことを目的に催吐処置(吐かせること)を行います。吐かせた後は、活性炭を投与したり、輸液療法(点滴)を行い(最低でも48〜72時間行うこととが推奨されています。)、摂取したブドウ中毒の原因物質の除去、吸収抑制を行います。
 症状がある場合は、基本的には輸液をしながら、制吐剤や利尿剤、リン吸着剤の投与など急性腎不全の治療が行われます。重症の場合は血液透析なども必要になるかもしれませんが、一般の動物病院で簡単に行える治療ではありません。

ぶどう中毒の予防

 当たり前のことですが、葡萄やレーズンを犬に与えないことです。誤って食べないようにテーブルの上に置きっぱなしにするなどをしないようにすることが予防となります。また、葡萄やレーズンだけでなく、それらを含むもの、果汁等を含むものも与えないように注意してください。

ぶどう中毒の看護/その他

 ぶどうを食べてしまった場合、症状が現れていなくても、時間が経過すると腎障害が現われたり進行したりすることがありますので、必ず動物病院を受診しましょう。
 ぶどうを摂取した犬の25~60%は無症状であったと報告されていますが、個人差が激しく死亡例もそれなりに報告されていますので、甘く見てはいけません。急性腎不全の症状が見られる前に治療を開始したほうが生存確率は高くなります。

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参考文献・資料等
  1. 犬の内科診療 Part1; 481:中毒(ぶどう)
  2. 犬と猫の毒物ガイド; 105-106:ブドウ(Vitis vinifera)の実
  3. Some food toxic for pets
  4. Household Food Items Toxic to Dogs and Cats
  5. Raisin and Grape Toxicosis in Dogs


<1>ブドウまたは干しぶどう摂取後に起きた犬の急性腎不全:犬43頭に関する回顧的評価(1992-2002)
<2>レーズンとブドウ: 犬を死に至らしめる可能性
<3>4頭の犬に認められたレーズンまたはブドウの摂食に関連した急性腎不全

この記事を書いた人

福山達也