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悪液質とは?
悪液質(あくえきしつ)とは、何らかの病気により栄養失調が起こり、衰弱した状態です。一般的な飢餓(きが)とは区別されるます。なぜなら飢餓は脂肪が消費されますが、悪液質は脂肪と共に筋肉も萎縮するためです。
悪液質の原因
悪液質は、心臓病や悪性腫瘍など重篤な全身疾患に伴う全身衰弱状態で、食欲不振や栄養失調が原因の根底にあります。
心疾患における悪液質を心性悪液質。悪性腫瘍の末期における、炭水化物やタンパク質の代謝変化などを原因とする悪液質を癌性悪液質と呼びます。
悪液質の症状
理想体重から10%以上の特徴的な削痩(さくそう:痩せること)が起こります。特に肩甲部、後肢、咀嚼筋群に筋萎縮が起こり、眼窩はくぼみ、特徴的な顔貌となります。また、全身の骨が容易に触れるようになり、皮膚は乾燥し、被毛は光沢を失います。
悪液質の場合、ただ単に痩せるのではなく、筋肉も減少します。以下のMCS:筋肉コンディショスコアを参考に、赤色で表示されてい部分を触って、どの程度の筋肉量があるかを観察すると、状態の目安になります。進行するようであればできるだけ早くベースになる病気を診断し、対処する必要があります。
悪液質の診断/検査
悪液質を診断するための確定的な方法はありません。理想体重から10%以上の削痩、特徴的な顔貌、咀嚼筋群の萎縮(特に特徴的)、肩甲骨付近の筋萎縮、骨盤周囲の筋萎縮がある場合は悪液質を疑います。心臓病(特に拡張型心筋症)による悪液質が疑われる場合は、聴診や胸部レントゲン検査、超音波検査、心電図検査などを行います。
腫瘍性疾患の末期には比較的悪液質が多いため、癌性悪液質(白血病、リンパ腫、様々な腫瘍疾患)が疑われる場合は、レントゲン検査、超音波検査などの画像診断、細胞診、蛋白電気泳動、血液検査、血液化学検査などを行います。
悪液質の治療
まず、原因となる基礎疾患の治療が主となります。それとともに対症療法を行うしかありません。ただし、基礎疾患の治療に用いる薬剤などの有害作用により食欲不振が起こっていないかは慎重に検討すべきです。例えば、心臓病に対する治療薬による有害作用がないか、過剰に利尿剤などが投与されていないか。抗がん剤を用いている場合はその副作用による食欲不振や嘔吐が起こっていないかなどです。これらが起こっている場合は、まずこれらに対処します。
ω−3脂肪酸含有量の高い魚油の補給は、悪液質を改善する可能性があるとされています。
悪液質の予防
基本的に予防法はありませんが、基礎原因になりうる病気は早く見つけて対処してあげることが重要です。
悪液質の看護/その他
悪液質による体重減少を止めるには、例えば、嗜好性の高い食餌を与えるとか、人肌程度に温めて与える、風味をつけるなど積極的な食事管理が重要です。
ご家庭での対処法としては「食欲不振」も参照してください。
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参考文献・資料等
- プライマリ・ケアのための診療指針
- Clinical and laboratory findings and survival time associated with cardiac cachexia in dogs with congestive heart failure
- Cachexia and Sarcopenia: Emerging Syndromes of Importance in Dogs and Catse
<1>.悪液質と筋肉減少症:犬と猫における重要な新興症候群
<2>.心不全の犬の生存と体重およびボディコンディションとの関連性
<3>.獣医腫瘍科に来院した犬のボディ・コンディションと体重減少の評価