猫カリシウイルス感染症

猫カリシウイルス感染症の治療

 猫カリシウィルスを直接排除する治療法は無いため、症状に応じて二次感染防止の抗生物質やインターフェロン投与、輸液(点滴)等の対症療法をします。その間に猫の抵抗力の回復を図ることです。だからこそワクチン接種できちんと予防しておくことが大事です。
 また、必要に応じて、目薬、食欲増進剤などを投与し、保温や湿度管理など飼育環境を良好にし、高栄養の食事療法を行い、自身の免疫力による回復を促します。
 強度区全身性猫カリシウイルス感染症でなく、二次感染が起きず重症化しなければ、1週間程度で回復し始め、2~3週間で治っていくことが多い病気ですが、前述のように見た目は回復してもウイルスを排出して他の猫に感染を広げる可能性があります。
 特に、多頭飼育の場合は他の猫にも症状が出ないかよく注意し、症状が現れたらすぐに受診し、治療を始めましょう。

猫カリシウイルス感染症の予防

 猫カリシウィルは、ワクチン接種で感染や重症化を防げる病気です(ただし、強度全身猫カリシウイルス感染症には効果がありません)。接種時期や種類、回数などについては当院にご相談ください。猫を飼育した必ずワクチン接種を心がけてください。これは基本の基本です。
 ただし、カリシウイルスには遺伝子の違いによりさまざまな種類(株といいます)が存在します。屋外では特に多くの株(種類)が存在し、ワクチンとは異なる株のカリシウイルスに感染することもありますので、可能であれば、完全屋内飼育をすることでウイルスとの接触機会を減らすことができます。また、キャットオーナーが感染猫などと接触した場合もきちんと手指や接触部位を消毒すること、感染猫が使用した食器や布は他の猫とは共有せず、消毒することを心がけましましょう。

猫カリシウイルス感染症の看護/その他

 家庭で看護する場合は、処方された薬をきちんと飲ませ、食欲がない場合、食欲不振などを参考にして、人肌程度の温かいよく混ぜた缶詰やパウチの食餌を与えるるようにしてください。
 猫カリシウイルス感染症は早期に治療を始めることで重症化を防げる場合もあります。くしゃみや鼻水など風邪様症状が見られたら、様子を見ないで、早めに当院にご相談ください。
 一般に猫カリシウイルス単独感染であれば予後は良好ですが、通常は他のウイルス感染(猫ヘルペスウイルスなど)、細菌感染も同時に起こることが多く、それらによあり症状が重篤化することもあります。また、猫免疫不全ウイルス猫白血病ウイルスに重感染していると症状が重篤になる傾向があります。壱岐島内でもこれらの感染症は蔓延しています。ワクチン未接種の場合はこれらの検査も行うことが推奨されますので、ご希望の方はお申し出ください。
 消毒する場合は0.1%次亜塩素酸ナトリウムが有効ですが、金属部への使用は注意してください。

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参考文献・資料等
  1. 猫の診療指針 Part3; 29-31:猫カリシウイルス感染症

  2. 犬と猫の日常診療のための抗菌薬治療ハンドブック;91-106:呼吸器感染症
  3. Antimicrobial use Guidelines for Treatment of Respiratory Tract Disease in Dogs and Cats: Antimicrobial Guidelines Working Group of the International Society for Companion Animal Infectious Diseases

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<1>最近の英国におけるFCV株群に対する猫カリシウイルス(FCV)ワクチンの中和能力に関する比較 
<2>Bartonella属、猫ヘルペスウイルス1、猫カリシウイルス、猫白血病ウイルス、および猫免疫不全ウイルスと猫の慢性歯肉口内炎に関する評価
<3>6週齢の子猫における猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルス、猫汎白血球減少症ウイルスに対するワクチン接種の効果を評価するための臨床試験
<4>猫ヘルペスウイルス1、カリシウイルス、および汎白血球減少症ワクチンの経鼻的単回投与における臨床徴候および病原性猫ヘルペスウイルス1による攻撃試験後のウイルス排出への影響 
<5>猫の自然発症型強毒性全身型猫カリシウイルス感染症における病理学的、免疫組織化学的、電子顕微鏡所見 
<6>フロリダ州動物保護施設に入所している猫における猫汎白血球減少症ウイルス、猫ヘルペスウイルス1型、および猫カリシウイルスに対する血清抗体価の保有率 
<7>犬および猫のウイルス性皮膚病
<8>実験的接種後のボルデテラ・ブロンキセプティカにより引き起こされた疾患に対する猫ヘルペスウイルス1と猫カリシウイルスの修飾生ワクチンの鼻腔内投与の効果
<9>特発性膀胱炎の猫における猫カリシウイルスのウイルス尿症、口腔内保菌状態、および血清中和抗体に関するネスティド症例対照研究 
<10>猫カリシウイルス検出法としてのp30遺伝子に基づくリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法の評価 
<11>強毒な全身性猫カリシウイルス性疾患の大発生
<12>特発性下部尿路疾患の猫から分離された新規の猫カリシウイルス2種が持つ遺伝的特徴 
<13>猫における猫ヘルペスウイルス1型、猫カリシウイルス、猫パルボウイルス感染に対する抵抗性を予測するための血清学試験の使用 

[WR2106,VQ2106:カリシウイルス]

■VMN Live

この記事を書いた人

福山達也