リンパ腫(猫編)

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リンパ腫とは?

 リンパ腫(りんぱしゅ)とは簡単に言うと、白血球の一種であるリンパ球が腫瘍(がん)になってしまう病気で、猫で最もよくみられる腫瘍のひとつです。猫の全腫瘍中の1/3は造血系腫瘍(リンパ系と骨髄系)が占めていますが、さらに、そのうちの50〜90%がリンパ腫であると言われます。特に猫では高齢(8~10歳)で発生することが多いのですが、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染していると若齢(1~3歳)でも発生します。

リンパ球は免疫反応に関与している白血球で、体内への細菌やウイルス等の侵入などを阻止しています。また、リンパ球には複数の種類(T細胞型・B細胞型・それ以外)があり、それぞれ異なった役割を担っていて、特にリンパ節というリンパ球が集まった器官も形成しています。

リンパ球は体の中のいろいろなところに分布しているため、腫瘍は腸などの消化器、鼻、縦隔洞、皮膚、腎臓、脳、脊髄、眼などいろいろなところにできる可能性があります。

シャムネコは好発品種とされています。

リンパ腫の原因

 猫白血病ウイルス(FeLV)が陽性の場合では陰性の猫と比べ約62倍猫免疫不全ウイルス(FIV:猫エイズ)が陽性の場合では約5倍、両方陽性の場合では約80倍発症する危険性があるといわれています。また、受動喫煙に暴露されている猫のリンパ腫発症の危険度は2.4倍で、5年以上の暴露では3.2倍といわれています

また、食餌とリンパ腫の関係が示唆されていますが、はっきりと証明する報告はありません。

リンパ腫の症状

 症状は発生する部位により異なり、元気がなくなる、リンパ節が腫れる、食欲不振体重減少嘔吐下痢、鼻血、呼吸困難、脱毛、神経症状など様々です。

リンパ腫の診断/検査

 腫瘍ができている場合、診断は細胞診検査(針吸引検査)でわかります。また、全身状態の確認のため、血液検査血液化学検査尿検査などをはじめとして、他の部位にも腫瘍が転移していないかを調べるために、レントゲン検査超音波検査なども必要になります。

ウイルス検査によりFeLV:猫白血病FIV:猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の確認を行うことは重要です。その他必要に応じて血液凝固系検査、骨髄検査、遺伝子検査(リンパ球クローナリティー解析)、場所によっては内視鏡、CTやMRI検査などを行うこともあります。

検査の結果などから、以下のようにその状態でステージ分類されることもありますが、様々な要因から限局性のリンパ腫以外、犬のように利用されていないのが現状です。(※ステージ分類には様々なものがあります)

ステージ1 単一のリンパ節または骨髄を除く単一臓器に局在
ステージ2 単一部位の複数リンパ節に病変が存在
ステージ3 全身のリンパ節に病変が存在
ステージ4 肝臓および/または脾臓に病変が存在(ステージⅢまでの所見あり/なし)
ステージ5 末消血液中、骨髄中に腫瘍細胞が存在
※サブステージ a:臨床症状がない b:臨床症状がある

リンパ腫の治療

 リンパ腫の治療方法には、内科的な化学療法(抗がん剤治療)、外科療法、放射線治療がありますが、リンパ腫は抗がん剤に非常によく反応してくれることが分かっており、約60%の症例で効果がありますので、腫瘍ができた場所にもよりますが、抗がん剤で治療するのが一般的です。但し、抗がん剤の組み合わせには様々な方法があります。リンパ腫のステージ、動物の状態、年齢、効果や費用、治療期間などを相談しながら選択します。

リンパ腫の予防

 まずは、猫白血病ウイルス(FeLV)の感染を予防することが重要でしょう。室内飼育するか室外で周囲に感染猫が多い場合には予防注射による予防を考える必要があります。また、猫免疫不全ウイルス(FIV:猫エイズ)の予防も効果があるかもしれません。

さらに、キャットオーナーが禁煙することも重要な予防になると考えられます。少なくとも猫の生活空間でタバコを吸わないことは重要です。

リンパ腫の看護/その他

 抗がん剤治療を行った場合の平均余命は6~9カ月程度であり、1年を越せる確率は20%程度と報告されています。但し、猫白血病ウイルスに感染していると治療効果・余命が短い事がわかっています。

抗がん剤の副作用として胃腸障害(嘔吐・下痢)、骨髄抑制(免疫力の低下)、脱毛が挙げられます。

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参考文献・資料等
  1. 猫の臨床Part2; 22-30
  2. 猫の臨床Part2; 108-110
  3. 伴侶動物治療指針Vol1; 12-28:犬と猫のリンパ腫の診断と化学療法の選択
  4. 伴侶動物治療指針Vol4; 10-22:猫のリンパ腫の診断と治療
  5. Prognostic Analyses on Anatomical and Morphological Classification of Feline Lymphoma


<1>犬および猫における網膜リンパ腫: 12症例に関する回顧的考察
<2>犬および猫におけるリンパ節細胞学的検査材料に関する診断上の有用性
<3>多中心型濾胞性リンパ腫の猫に生じた皮膚脆弱症候群
<4>猫における節外性リンパ腫: 予後因子および治療の選択
<5>臨床的に健康な猫および罹患猫における血清チミジンキナーゼ活性: リンパ腫に対するバイオマーカーとしての可能性
<6>若齢猫の腫瘍学: 1歳以下の猫の233腫瘍の回顧的評価(1993-2008)
<7>猫のリンパ球形質細胞性腸炎および低グレード消化器型リンパ腫53症例の組織病理学的および免疫組織化学的評価
<8>細胞学的検査で胆嚢での併発の確証が得られた猫の膀胱の節外B-細胞型リンパ腫
<9>ビンブラススチンの過剰投与後の猫における毒性および救急処置
<10>犬および猫の非ホジキンリンパ腫171症例のWHOに従った組織病理学的分類
<11>猫の腎移植およびシクロスポリンによる免疫抑制後の悪性腫瘍の発生率および危険因子
<12>3頭の猫の眼瞼腫瘍の回顧的研究
<13>低グレードの消化器型リンパ腫: 17症例の臨床病理学的所見および治療への反応
<14>猫の節外性リンパ腫: 110頭の猫の化学療法への反応および生存率
<15>猫のリンパ腫におけるP-糖タンパク発現の評価および臨床転帰との関連性
<16>猫の大顆粒リンパ球性リンパ腫の臨床および病理学的所見、治療、および転帰に関する記載
<17>混合系統の抗原発現を示した血管内リンパ腫の猫の1例
<18>原発性中枢神経系T細胞リンパ腫が脳室周囲に拡大した猫
<19>リンパ腫に対するCOP化学療法中における猫の生活の質に関する飼い主の認識
<20>猫30頭および犬36頭における胸腺の病理学再評価
<21>頭蓋内B細胞型悪性リンパ腫に罹患した猫における高ナトリウム血症
<22>猫のホジキン様リンパ腫:20症例(1992-1999年)
<23>猫の鼻に発生したリンパ腫46症例(1989-2004)
<24>頭蓋内腫瘍の猫の61例: 発生部位、腫瘍タイプ、痙攣パターン
<25>原発性気管内リンパ腫の猫の4例
<26>リンパ腫に罹患した猫におけるクロラムブシル誘発性ミオクローヌス
<27>猫におけるリンパ腫の治療原則
<28>猫白血病ウィルス感染症の免疫調整療法
<29>悪性リンパ腫を発症しているオーストラリア猫の猫白血病ウイルスの状態
<30>犬と猫における大顆粒リンパ球由来の腫瘍
<31>4頭の猫の大顆粒リンパ球性リンパ腫におけるパーフォリン様免疫反応
<32>腫瘍性疾患の猫20頭におけるロムスチンの治療効果と血液学的毒性: 実験的投与計画に対する重要な評価
<33>6例の猫における大顆粒リンパ球性白血病/リンパ腫
<34>猫の腎移植レシピエントにおける悪性腫瘍の罹患率
<35>週1回のサイクロフォスファマイド、ビンクリスチンおよびプレドニゾンによるプロトコールにより治療を行った猫のリンパ腫:114例(1998-2008)
<36>卵巣摘出した猫における限局性子宮T細胞リンパ腫
<37>臨床における病理学 関連する化膿性鼻炎と表皮潰瘍および右腎のリンパ腫を伴う、鼻腔の非上皮向性B細胞リンパ腫
<38>犬猫の中枢神経系リンパ腫のMRI特性
<39>炎症性腸疾患および腸管の小細胞性リンパ腫の猫は血清25-ヒドロキシビタミンD濃度が低下している
<40>猫のリンパ芽球性リンパ腫の化学療法およびその後の腹腔照射
<41>猫および犬で確認された肺リンパ腫のX線画像所見
<42>猫の小細胞性リンパ腫と炎症性腸疾患:治療および予後
<43>猫の小細胞性リンパ腫と炎症性腸疾患:診断的困難
<44>びまん性小腸リンパ腫または炎症性腸疾患を有する猫の固有筋層の超音波画像評価
<45>フェノバルビタール誘発性偽性リンパ腫が疑われた猫の1例
<46>猫のリンパ腫に対するCOPベースのプロトコールにおけるビンクリスチンとビンブラスチンを比較するための前向き臨床試験
<47>コンパニオンアニマルにおける廃棄物管理と癌との関連性
<48>鼻腔型リンパ腫の猫97頭の生存解析:多施設での回顧的研究(1986年~2006年)
<49>あなたの診断は何ですか? 気管のリンパ腫
<50>あなたの診断は何ですか? 膀胱のリンパ腫
<51>猫リンパ腫における多剤化学療法:猫23頭における治療の転帰,耐容性,および期間
<52>猫のリンパ腫におけるVELCAP‐C療法の有効性と毒性
<53>消化管リンパ腫の猫における消化管全層手術後の周術期合併症
<54>鼻腔内リンパ腫の猫19頭における放射線療法および化学療法に対する反応
<55>猫の低エコー性腎被膜下肥厚とリンパ腫の関連性
<56>リンパ腫の猫の血漿アミノ酸プロフィールおよび腫瘍負荷量に対するL-アスパラギナーゼの効果
<57>犬3頭および猫1頭に発生した膀胱のリンパ腫
<58>低グレードのリンパ球性リンパ腫を発症した猫の転帰:41例(1995-2005)
<59>猫の炎症性腸疾患と消化管型リンパ腫の診断に対する内視鏡によるバイオプシー標本と全層バイオプシー標本との比較
<60>99mTc-セスタミビを使ってリンパ腫を評価した猫の1例
<61>猫白血病ウイルス根絶後の猫のリンパ腫
<62>猫の消化器型リンパ腫
<63>リンパ腫に罹患しウィスコンシン-マディソン大学化学療法プロトコールで治療した猫の反応率および生存期間:38症例(1996~2003年)
<64>猫のリンパ腫の細胞診
<65>猫の非上皮親和性皮膚型リンパ腫の治療に対するロムスチンの使用
<66>腕神経叢に波及した猫のリンパ腫に対するMRI診断
<67>猫の上皮親和性腸管型悪性リンパ腫:10症例(1997-2000)
<68>リンパ腫の猫におけるbcl-2とMIB-1標識による指標
<69>悪性リンパ腫の猫に対するサイクロフォスファマイド、ビンクリスチン、およびプレドニゾロン(COP)を用いた化学療法:古いプロトコールによる新たな結果
<70>猫の腎移植レシピエントにおける悪性腫瘍の発生率
<71>猫の炎症性腸疾患:病因、診断、およびリンパ腫との関連
<72>脳に発生した血管内リンパ腫の犬におけるMR画像所見

この記事を書いた人

福山達也