膀胱炎(猫編)

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膀胱炎とは?

 膀胱炎(ぼうこうえん)とはオシッコを貯める働きをする臓器である膀胱に様々な理由(ストレス、細菌、結晶・結石など)から炎症が起こる病気です。特に猫では最も罹りやすい病気のうちの一つであることが知られています。

猫下部尿路疾患
 元々砂漠の生き物であった猫は、水を飲む量が少なくても生きていけるように、オシッコを濃縮して残った水分を体内で再利用し、体内にある水分を効率よく使えるようにできています。ですから、人や犬に比べてオシッコが臭いのは濃縮されていることも一つの理由です。猫に泌尿器系の病気(腎臓病や結石など)が多いのは、このようなことも関係しています。
 また、一般に膀胱炎は人では女性に多いのですが、猫ではオスに多い病気です。時期は水をあまり飲まなくなる冬場に多かったり、肥満の猫、純血種の猫(特にペルシャ)に多かったりしますので要注意です<3>

膀胱炎の原因

猫に下部尿路症状を引き起こす可能性のある原因

膀胱炎にはいくつかの原因があります。細菌性の場合、膀胱内に侵入したブドウ球菌や大腸菌等の細菌が原因となって膀胱に炎症がおきます。また、膀胱内に生じた結晶や結石によって膀胱が傷つけられ、そこに細菌が感染することで引き起こされることもあります。このような場合、通常は感染が起こらないように働く身体のバリア機能がなんらかの原因で衰えてしまっていることが関与していると考えられます。細菌性膀胱炎は比較的高齢の猫に多いと言われます[4]

結晶や結石は、リンやマグネシウム、カルシウムといったミネラルがバランスよく適切に摂取できていない場合や、食餌の影響で尿pHが酸性やアルカリ性に傾きすぎている場合にできます。

 また、猫では環境が変わった、トイレの掃除ができていない、新しい同居人や動物が増えたなどちょっとしたストレスでも膀胱炎を発症することもあります。人や犬では「細菌性膀胱炎」が多いのに対し、猫では原因の分からない「特発性膀胱炎(原因が特定できない、あるいは原因不明)」が多く見られます。「特発性膀胱炎」はストレスが発症要因の一つだと言われており、比較的若い猫に多く、治っても再発しやすいという特徴があります。

膀胱炎の症状

 血尿が見られたり、頻尿(少量しか尿がでないが、トイレに頻繁に行く症状)などがみられます。その他、不適切な場所での排尿、排尿時の痛み、頻繁に水を飲む、尿臭が臭い、症状が悪化すると食欲不振、元気消失などの症状が見られることもあります。特発性膀胱炎では、ストレスを強く感じるような状況下での発症や症状の悪化が見られることがありますので注意して観察してください。

尿道が細いオス猫では、膀胱炎の影響で尿中に大量に出てきた炎症細胞や膀胱粘膜の細胞が固まりとなり、細くなっているペニスの先の尿道部分を塞いでしまい尿が出ない尿道閉塞(にょうどうへいそく)/尿閉(にょうへい)になってしまうことがあります。また、膀胱に激しい炎症が起こると、膀胱の筋肉が緊張して尿が出せなくなり、尿閉になってしまうこともあります。尿を出せない状態が続くと、膀胱内の尿が腎臓に逆流し、腎不全や尿毒症を引き起こし、嘔吐や体温の低下といった症状が見られ、生命にかかわります。

膀胱炎の診断/検査

尿検査超音波検査、必要に応じてレントゲン検査などを行い診断します。また、全身状態や腎機能を確認するために血液検査血液化学検査などが必要になります。

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この記事を書いた人

福山達也