副腎皮質機能低下症(アジソン病)

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副腎皮質機能低下症(アジソン病)とは?

 副腎皮質機能低下症(ふくじんひしつきのうていかしょう)は俗に「アジソン病(アジソンさんが発見したから)と呼ばれることもあります。副腎は、左右の腎臓の近くにあり、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)を分泌する大切な内分泌器官です。このコルチゾールは、糖代謝や脂質代謝、タンパク質代謝、体の免疫系やストレスに対する作用などさまざまな働きを担っています。
 副腎皮質機能低下症になると、この副腎皮質ホルモンの分泌が低下することにより、さまざまな症状が引き起こされます。若齢〜中年齢(平均約 4 〜6歳齢:3〜4歳頃が最も多い、ただし、2ヶ月から12歳と幅広い年齢に見られる)の雌犬(特に避妊手術をしていない雌)で多く、海外では純血種(プードル(すべてのサイズ)、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ベアデッド・コリー、ロットワイラーなど)に多いと言われていますがどんな犬種でも起こります。猫では珍しい病気です。

副腎皮質機能低下症(アジソン病)の原因

 副腎皮質機能低下症の発症の原因には、大きく分けて次の2つがあるといわれています。
  1. 原発性副腎皮質機能低下症
    副腎自体が萎縮したり破壊されたりして、副腎皮質から分泌されるホルモンが低下することによって起こります。これは、腫瘍や感染症、免疫介在性疾患、出血などさまざまな原因があるといわれています。犬は90%このタイプだと言われていますが、その原因を特定することはほとんどできないと言われます。
    また、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)の治療に用いる薬物も副腎を破壊することがあります。
  2. 二次性(続発性)副腎皮質機能低下症
    副腎皮質ホルモンの分泌を促進する下垂体ホルモンの分泌が低下するためにおこります。
    その原因として下垂体または視床下部が腫瘍、創傷、炎症などの原因により破壊され副腎を刺激するホルモンの分泌が低下ることにより、副腎が萎縮する場合や、長期ステロイド剤の投与を急に中止した場合などに起こります。

副腎皮質機能低下症(アジソン病)の症状

 副腎皮質ホルモンは、体に対して多くの影響を与えるホルモンです。このため、副腎皮質機能低下症ではさまざまな症状がみられます。ただ、はじめのうちは、特徴的な症状はありません。なんとなく元気が無い(元気消失)、ちょっと体重が減ってきた、時々嘔吐下痢が出る程度です。なんとなく具合が悪くなったりよくなったりすことが初期の特徴でもあります。
 病気が進む元気消失(96%)と食欲不振嘔吐(81%)下痢、腹痛、体重減少や血糖値の急激な低下、脱水などが起こります。ストレスがかかると一挙に症状が悪くなったり、低体温、震え、けいれん、徐脈、多飲多尿、血便、吐血などを起こします。激しい症状は副腎皮質の90%以上が破壊されてから起こり、平常時でもホルモン不足による症状がみられるようになります。
 症状が急性の場合では高カリウム血症から心臓の機能不全を起こすことがあり、ショック症状を起こし、重度の場合では死に至ることもあります。
 副腎皮質機能低下症の症状は曖昧で他のどの病気とも似通っているため、診断がなかなか難しいことのある病気です。

副腎皮質機能低下症(アジソン病)の診断/検査

 問診、身体検査はもちろん、血圧測定、血液検査血液化学検査尿検査糞便検査(鞭虫寄生を除外)、コルチゾール測定レントゲン検査超音波検査、などが必要になります。
 この病気を疑う場合、コルチゾールの検査は非常に重要です。もしもコルチゾール値が2.0μg/dLを越えていれば、まず副腎皮質機能亢進症ではありません。なぜなら、この場合の感度は100%とされているからです[9][11]確定診断にはACTH刺激試験が必要になります。(壱岐動物病院でも院内でコルチゾール測定等が可能です)
 超音波検査で左の副腎の厚さが3.2mm未満あであれば副腎皮質機能低下症が強く疑われます[12]が、それだけでは診断の確定はできません。やはり診断には他の検査も必要です。
 重症の場合、元気がなくなり、虚脱して動物病院に連れてこられることも多く、診断を確定してから治療を行うのでは手遅れになることもあるので、ほとんどの場合緊急治療を行いながら検査を行うことになります。

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この記事を書いた人

福山達也