※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!
熱中症とは?
熱中症の原因
犬や猫は人に比べ暑さに弱く、熱中症になりやすいといわれています。その原因としては全身が被毛に覆われていて体温が放散しにくいことと、人のように全身から汗をかいて体温を下げることができない(足の裏と鼻には人と同じ様に汗をかく汗腺があります)ので、主に口を開き、浅く速い呼吸をおこなうパンティングと呼ばれる呼吸方法により熱を放散し、体温を調節しています。
- 高温多湿の環境で一定時間以上運動をする(特に注意)
※イギリスでの報告ですが、熱中症の7割以上が暑い日の運動中に起こってます。 - 暑い車内にいる(特に注意)
- 気温が高く、換気が不十分な環境に長時間いる
- 高温時に屋外で一定時間直射日光を浴びる
- 高温多湿な中、キャリーケースの中に長時間いる
熱中症の症状
熱中症の診断/検査
熱中症の治療
まず、体温を下げるために、様々な処置を行います。それと共に、点滴やショック症状や脳炎を防ぐための薬剤投与などが必要になるでしょう。重症であれば、入院して集中的に治療を行う必要があります。多くのスタッフの手が必要となり、その他、抗生物質、嘔吐や下痢に対する薬剤など症状や予防的に多くの薬剤の投与が必要になります。
重症度の高い意識の喪失、ARDS(急性呼吸促迫症候群)、DIC(播種性血管内凝固症候群)、ショック症状(血圧低下などの症状)、多臓器不全が見られる場合は回復の可能性は低くなります。この場合、治療も長期、高額となることが予想されますので、どこまでを望むかはきちんと家族や主治医と話し合う必要があります。
熱中症の予防
- エアコンのない部屋や暑い環境下に長い時間いる状況(留守番時など)にしない。部屋の風通しをよくし、直射日光を避ける。(暑い時期の室内の温度は26℃以下で維持)
- 外気温が25℃を超える場合、締め切った車などの中に動物だけを残すことは絶対に避ける。
- 高温や多湿の環境で長時間散歩などの運動をしない。暑い日は散歩をやめるのも必要です。
- 照り返しの強い舗装道路上での散歩をしない。早朝や夕方以降などの涼しい時間帯に散歩をする。(朝夕涼しく感じても、お散歩の際にはアスファルトをさわって温度を確かめる習慣をつけましょう。「5秒ルール」というのがあり、5秒間素手でアスファルトに手を置けないなら、散歩は禁止です)
- 新鮮な水をいつでも十分に飲めるようにする。 ただの水だけでなく電解質補給のために電解質サポート(当院でも販売しております)などを与える。特に夏場はいざというときのためにこのような電解質補給を常備しておくといいでしょう。
- 夏場の散歩には以下を携帯することを心がける
□常温の水
□タオル
□うちわ
※当院では当院をご利用のペットオーナー様向けに、お散歩用うちわを配布しております。ご希望の方は受付けでお申し出ください。(配布終了しました)
□冷却グッツ
など、とにかく高温多湿を避けることが予防になります。気温がそこまで上がりきっていない初夏や残暑でも、湿度が高かったりすると熱中症にかかることがあります。また、熱によるダメージは数時間から数日後に現れることもありますので注意してくだざい。
熱中症の看護/その他
はっきりと言っておきます。夏場は動物たちにとっては涼しい家でゆっくりするのが幸せです。一緒に旅行に行ったり、海水浴やお祭り、花火大会に行ったり、車で移動したりすることは人間の自己満足です。そして、そこには絶えず熱中症の危険があることを認識しておいてください。旅行などは涼しい季節に行きましょう。
・濡らしたタオルで体を覆う
・涼しい場所で風を送ったりする(冷房が可能なら20℃に設定)
・タオルを巻いた保冷剤や氷まくらを首や脇の下、内股などの被毛や皮膚が薄く体温が下がりやすい部分にあてて冷やす
◆英国獣医師会BVAから発信された7 simple steps◆
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ペットへ常時給水できる体制を整える必要に応じて、いつでも換気をする意識を持つ
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暑い日は散歩・運動をさせない
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暑い日は日除けでペットを守る
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熱中症の兆候を覚えて、ペットを良く観察する
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車内に動物を残して離れない(時間の長さではない)
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ペットを冷却しても反応が鈍い時は躊躇無く動物病院へ向かう
※40℃以上の高熱、意識の低下、自分で飲水できない、のうち一つでも当てはまるなら!
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動物医療保険をお持ちの方は診察前に保険証を提示してください!
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参考文献・資料等
- Incidence and risk factors for heat-related illness (heatstroke) in UK dogs under primary veterinary care in 2016
- 犬の内科診療 Part1; 483-488:熱中症
- Heatstroke in Dogs
- Heatstroke in Dogs
- Proposing the VetCompass clinical grading tool for heat-related illness in dogs
- 伴侶動物治療指針Vol.12;398-410:犬の熱中症の診断と治療
- 犬と猫のエマージェンシー対応;210-219:熱中症
- 犬と猫の救急診療;75-78:熱中症
- VMN 神経学スペシャルセミナー2017 “実践 今知っておきたい神経病” 神経毒性 Vol.01
- VMN 神経学スペシャルセミナー2017 “実践 今知っておきたい神経病” 神経毒性 Vol.05
- 瀬戸口 明日香先生の「明日から役立つ」シリーズ 第16回 犬と猫の膵炎 vol.01
- 瀬戸口 明日香先生の「明日から役立つ」シリーズ 第15回 凝固異常へのアプローチ vol.04
- 瀬戸口 明日香先生の「明日から役立つ」シリーズ 第11回 高窒素血症へのアプローチ vol.04
- 瀬戸口 明日香先生の「明日から役立つ」シリーズ 第6回 発熱へのアプローチ vol.01
<1>熱中症に続発した壊死性肺炎が原因で気胸を発症した犬の1例
<2>熱中症:体温調節、病態生理、そして素因
<3>熱中症:臨床徴候、診断、治療、そして予後
<4>犬の熱中症の予後指標としての末梢血有核赤血球
<5>犬の熱中症:54症例(1999-2004)の回顧的研究と死亡に対する危険因子の分析
<6>犬の熱射病:臨床症状、治療、予後および予防
<7>犬の熱射病:病態生理学および素因
[WR2106,VQ2106:熱中症]・