※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!
発熱とは?
熱があるときの状態やそれに伴う症状(元気消失、食欲不振など)をよく観察して、病的な発熱かどうかを判断してください。厳しい暑さの中で発症する熱中症や日射病では体温がかなり上昇して命に関わる危険な状態になります。ただ、これは厳密には発熱ではなく高体温(こうたいおん)となります。
発熱の原因
犬パルボウイルス感染症、犬ジステンパーウイルス感染症、犬伝染性肝炎、レプトスピラ症、猫カリシウイルス感染症、猫ヘルペスウイルス感染症、猫免疫不全ウイルス感染症、猫伝染性腹膜炎、猫白血病ウイルス、猫汎白血球減少症、肺炎、歯根膿瘍、気管支炎、感染性腸炎、腎盂腎炎、膀胱炎、子宮蓄膿症、細菌性前立腺炎、椎間板脊椎炎、感染性関節炎、敗血症
※統計的に猫で最も多い発熱の原因は感染症(37.8%)です。
刺激、異物、毒物、中毒、薬剤、自己免疫疾患(免疫介在性溶血性貧血、免疫介在性関節疾患、全身性エリテマトーデスなど)、 急性肝炎、中毒性肝障害、膵炎(犬・猫)、腹膜炎、胸膜炎、炎症性腸炎、食道炎、血管炎、多発性関節炎、多発性筋炎
※統計的に犬で最も多い発熱の原因は免疫介在性疾患(22~34.8%)です。
白血病、リンパ腫、形質細胞腫、肥満細胞腫、悪性組織球症
発熱の症状
発熱の診断/検査
発熱の治療
発熱の治療はその原因によります。熱射病や熱中症など以外、一般的に発熱を急いで下げることは必要ではありません。なぜなら、発熱は有用な防御メカニズム(病気を治そうとしているから)です。ただ、激しい痛みや炎症によるもの、ひどい感染が起こってるなどの場合は鎮痛解熱剤を用いる場合もあります。一般に感染症には原因により、抗生物質や抗ウイルス剤、抗真菌剤などが用いられ、炎症には抗炎症剤、免疫疾患には免疫抑制剤といった治療を行い。必要に応じて輸液(点滴)なども必要になります。
発熱の予防
まず暴れないよう身体を押さえます。1人では難しいときは、家族に頼むなどして危険のないように行いましょう。そして、しっぽを持ち上げ、体温計を肛門に差し込みます。その際、直腸を傷つけないようまっすぐさします。潤滑剤をつけたり、軽くねじりながらさすとうまくいきます。あまり肛門の奥に入れすぎないように注意してください。
※豆知識:
猫の場合、どうしても直腸で体温が測れない場合、体温計を腋の下で測定した体温に+0.9℃でほぼ体温と同じと判断できるという報告があります。豆知識として覚えておいてください。犬はばらつきがあって腋の下での体温測定は推奨されていません。犬は耳で測る体温計の方がまだいいと言われていますので、いざと言うときのために常備しておくと良いでしょう。
発熱の看護/その他
体温を測定したら記録しておくと診察の役に立ちます。いつから熱があるのか、何をしていたら熱が上がったのか、気づいたことをメモしておくとよいでしょう。また、急に熱が出たのか、日がたつにつれて徐々に熱が高くなっていっているのか、日によって熱があったりなかったりと、ばらつきがあるのかなど観察してください。熱があるときは、少なくとも朝・夜2回体温を測定してください。また、発熱以外に、他にいつもと違う症状はないか観察し、あればメモしておいてください。たとえば、食欲がない、元気がなお、呼吸がおかしい、嘔吐や下痢がある、痛みがある、歩き方がおかしいなどです。
よく「体が熱いみたいです」と言う方がいますが、体温を測ってみると正常という場合がほとんどです。日頃から身体を触る時に耳の内側を触る癖をつけておくといいでしょう。動物の身体は毛で覆われています。そのため実はちょっとした体温の変化を人の指先で感じ取るのはなかなか難しいのです。耳の内側は毛がないので、いつも触っていると微妙な体温の変化を感じ取ることができる可能性が高くなります。
発熱の中にはいろいろ検査をしてもなかなかその原因を突き止められない「不明熱」と言われるものがあります。それらを診断するには費用と時間がかかることがあることを知っておいて下さい。
そういえば、広く誤解されているのは、「発熱が細菌を殺す」ということです。実際は、発熱で細菌を直接殺すのではなく、感染に対する反応を改善しようとしているのです。
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参考文献・資料等
- プライマリ・ケアのための診療指針;54-58
- 小動物臨床指針;23-24
- 伴侶動物治療指針 Vol.9; 373-385:犬と猫の不明熱 ~診断アプローチと好発疾患~
- The Diagnostic Approach to Fever of Unknown Origin in Dogs
- Uncovering the Cause of Fever in Dogs
- Diagnostic investigations in 101 dogs with pyrexia of unknown origin
- Retrospective study of fever in dogs: laboratory testing, diagnoses and influence of prior treatment
- Ettinger’s Textbook of Veterinary Internal Medicine 9ed Chapter 16: Fever
<1>猫の麻酔後発熱
<2>発熱を伴う犬についての回顧的研究: 治療前の検査室所見による診断と影響
<3>原因不明の発熱:診断のための系統的なアプローチ
[WR2106,VQ2104:発熱]
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