アナフィラキシー

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アナフィラキシーとは?

 アナフィラキシーとは、薬剤や毒素など外から摂取または侵入した原因物質に体が激しく反応する過剰なアレルギー反応が起こった状態です。犬や猫でよく知られているアナフィラキシーは、抗生物質、造影剤投与やワクチン接種によるものが挙げられます。
 アナフィラキシーの中でも、特に重篤なアナフィラキシー・ショックが起こると、命を脅かすような状態に陥って、一分一秒を争うような危険な状態になります。

アナフィラキシーの原因

 アナフィラキシーを起こす原因物質としては様々なのもがあります。代表的なものは、ハチ・クモなどの昆虫やヘビなど爬虫類の毒、抗生物質、造影剤、麻酔薬、鎮静薬、ホルモン剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗がん剤などの薬剤、ワクチン、牛乳、卵白、柑橘類、甲殻類、チョコレート、穀物などの食品、他には稀ですが、熱や寒冷、運動などがアナフィラキシーを引き起こすこともあります。

アナフィラキシーの症状

 アナフィラキシーの症状が現れるまでの時間は、原因物質の摂取または侵入から数分から数時間以内に出ることが多く、特に重篤なアナフィラキシー・ショックは数秒から数分(1時間以内)に出ることが多いものです。また、食物によるアナフィラキシーは食べてから30分以上経ってから症状が現れることもよくあります。
 アナフィラキシーを起こしたときの症状は、じんましん、発赤(皮膚が赤くなる)、掻痒(かゆみ)、嘔吐下痢などで、重篤なアナフィラキシー・ショックの場合は低血圧、頻脈(脈拍数多くなる)、呼吸困難などを起こし、ぐったりとします。アナフィラキシー・ショックは、治療を施さないと1時間以内に死亡するといわれていますので注意が必要です。
 その他、血液凝固障害や腹水[4]や腹腔内出血[6]が見られることも多いと報告されています。

アナフィラキシーの診断/検査

 アナフィラキシーの診断にはアナフィラキシーの原因になるようなものへの接触や摂取があったかどうかの問診、身体検査などを行いますが、アナフィラキシー・ショックが疑われる場合はまず治療を優先しなければなりません。
 全身状態を把握するために、血液検査血液化学検査尿検査などを行います。また、犬では超音波検査AFAST®検査[3]によるチェックがアナフィラキシーかどうかを判断する助けになることがあります。
※低体温、入院後6時間以内の低血糖、高リン血症、PT延長は予後に影響する[4]と報告されています。

アナフィラキシーの治療

 アナフィラキシーの状態に応じて、降圧剤、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤、各種薬剤を投与します。それと同時に必要に応じて、輸液(点滴)や酸素吸入、人工呼吸、心電図や血圧などのモニターなどを行うこともあります。
 特に、アナフィラキシー・ショックの場合は1分1秒を争いますので迅速に対応する必要がありますが、軽度のアナフィラキシーの場合(厳密にはアナフィラキシー様症状とも言われます)は、ステロイドの注射などで経過を観察することもあります。

アナフィラキシーの予防

 ワクチン接種や各種注射の後、アナフィラキシーの原因になるものを摂取するまたはしたときは、激しい運動を控え、顔が腫れてくる、呼吸が早い、ぐったりしている、嘔吐をするなどおかしい様子が現れないか注意して観察し、異常がみられたらすぐに当院を受診してください。
 ワクチン接種の際には、来院する日は激しい運動や興奮させることなどを避け、夏場であればクーラーをつけた車で動物病院を受診しましょう。また、接種後もすぐに帰らず15〜30分くらいは動物病院の近くにいることをお勧めしますし、歩いて帰ったり、興奮させる、激しい運動をするなどを避け、安静にしながら適温の下、しっかりと様子を観察しましょう。
 さらに、アナフィラキシーは数時間後におこる場合もありますので、ワクチン接種を午前中に行うことで、病院の診察時間内に対応してもらうことができますので、お薦めです。
 ヘビやハチ、クモなどに対しては、できるだけ屋内飼育を心がけるようにする、散歩の時にはノーリードは厳禁、草むらや森などに行かない、散歩中もよく観察することで昆虫などが原因のアナフィラキシーを予防することができます。
 食べ物に関しては、日頃からきちんとした総合栄養食のペットフードを与えることが重要です。

アナフィラキシーの看護/その他

 重篤で死に至るようなアナフィラキシー・ショックの多くは、注射後15分以内に起こることが多い多いものです。特に各種予防注射などは摂取後15分程度は待合室や駐車場などで過ごすとよいでしょう。
 アナフィラキシーがおこった場合、その後3日間は注意深く動物を観察し、気になる変化があれば必ず獣医師の診察を受けましょう。
 確かにワクチン接種や抗生物質、造影剤などのアナフィラキシー・ショックは0ではありませんが、皆さんが思っている以上にその確率は高くはありません。また、的確に予防したり対処することで更にその確率を下げることができますので、上記「予防」の項目をよく読んで参考にしてください。

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参考文献・資料等
  1. 伴侶動物臨床指針Vol.9; 430-434:ワクチン接種後アレルギー反応
  2. 犬の内科診療 Part1; 467-472:アナフィラキシー
  3. The Gallbladder Halo Sign: More than Canine Anaphylaxis & Hemoabdomen – a Canine Complication You MUST Know
  4. Mortality rate and prognostic factors for dogs with severe anaphylaxis: 67 cases (2016–2018)
  5. Elevation of alanine transaminase and gallbladder wall abnormalities as biomarkers of anaphylaxis in canine hypersensitivity patients
  6. Anaphylaxis-related hemoperitoneum in 11 dogs
  7. アナフィラキシーおよびアナフィラキシー様反応のメカニズム
  8. アナフィラキシーおよびアナフィラキシー様反応の臨床症状と治療
  9. アナフィラキシーおよびアナフィラキシー様反応の予防
  10. Anaphylactic Shock: How to Effectively Diagnose and Treat
  11. Spontaneous abdominal effusion in dogs with presumed anaphylaxis


<1>コンパニオンアニマルの食物有害反応に関して批判的に評価されたトピック(6): 犬および猫の食物有害反応における非皮膚症状の有病率
<2>猫の悪性腫瘍に対してパクリタキセル(タキソール)を用いた治療の診査: 記述的症例シリーズ
<3>猫に対する犬の血液の異種輸血: 文献の再評価
<4>化学療法後のショック: 有害作用の管理
<5>Crotalus adamanteus(トウブガラガラヘビ)による蛇咬傷に対する抗毒素療法に関連して血清病を発症した犬の1例
<6>デキサメサゾン抑制試験に関連して致死的なアナフィラキシーが起こった犬の1例
<7>Malassezia pachydermatis性皮膚炎に罹患したアトピー犬から採取した血清のマラセチアに対する即時型過敏症の受身伝達に関する評価
<8>抗ヒスタミン剤の毒性について
<9>アナフィラキシーが疑われた犬と、敗血症が確認された犬の臨床所見の比較
<10>犬猫の非心原性と推定される肺水腫のX線画像所見と基礎原因との相関性
<11>今月の麻酔症例
<12>肺葉切除術を受けた、犬糸状虫感染犬におけるアナフィラキシー様反応
<13>大学附属動物病院にて心肺脳蘇生法による処置を受けた、心肺停止となった犬猫に対する予後指標
<14>猫におけるワクチン接種後の有害事象:2,560例(2002-2005)
<15>ヒト血清アルブミン点滴に対する健康犬の反応
<16>画像診断:犬における大量のミツバチ毒注入後の急性肺損傷
<17>フェレットにおけるジステンパーと狂犬病のワクチン接種に関する有害反応の発生率と危険因子
<18>今月の臨床繁殖学問題
<19>ジステンパーまたは狂犬病ワクチンを接種したフェレットにおける有害事象の発生率:143例(1995-2001年)

[WR21,VQ21:]

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この記事を書いた人

福山達也