膀胱結石症

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膀胱結石症とは?

 膀胱結石症(ぼうこうけっせきしょう)とは、尿を貯める膀胱内にできた結晶が結石を形成する病気です。また、腎結石や尿管結石が移動して膀胱に入ると、これも膀胱結石と呼ばれます。
 結石の見た目は石のように固く表面はなめらかなこともあれば、ギザギザしていたりぼこぼこしていたりすることもあります。大きさは数 mmから数 cmと様々で、中には膀胱とほぼ同じような大きさまで巨大化することもあります。

膀胱結石症の原因

 膀胱結石を形成する尿の結晶の種類はさまざまなものがあり、主なものに、ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)、シュウ酸カルシウム、尿酸アンモニウム、ケイ酸塩、シスチンなどがあります。それぞれ、以下のような特徴が挙げられます。

●ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)
 
最もよくみられる尿中の結晶のうちの一つです。尿がアルカリ(高pH)性に傾くと、尿中に出やすいです。特に尿の中に細菌がいると、尿がアルカリ性に傾くので、そのことが原因でストルバイト結石が出ることがあります。そのため、尿の細菌感染を制御することがストルバイト結晶の治療にも大切になります。幸い、ストルバイトは、治療により溶かすことのできる結晶です。

●シュウ酸カルシウム
 尿が酸性に傾くと、尿中に結晶ができやすい結石です。シュウ酸カルシウムの結晶ができる仕組みはまだはっきりとはわかっていません。シュウ酸カルシウムは、療法食により溶かすことのできない結晶です。

●尿酸アンモニウム
 
尿酸アンモニウム結石は、犬において遺伝性に起こりやすい結石だとされています。特に、ダルメシアンやブルドッグがその代表です。但し、その他さまざまな犬種でも尿酸アンモニウムが尿中に出やすい遺伝子変異が報告されています。

 遺伝以外にも、重度の肝不全や門脈体循環シャント(PSS)の犬でも見られます。これは、血中のアンモニアが分解されないことにより、尿酸アンモニウムが尿中に出るようになるためです。また、尿酸アンモニウムは尿が酸性に傾くと結晶化しやすいといわれています。

●ケイ酸塩・シスチン

 ケイ酸塩またはシスチンは稀な膀胱結石です。

膀胱結石症の症状

 膀胱結石の場合ほとんど症状が現れないこともよくみられますが、主な症状としては、血尿、頻尿があり、結石が巨大になると腹痛などが見られます。
 
 脱また、時には元気消失、食欲不振などが見られることもありますし、細菌感染が起こっている場合、尿から異様な臭いがしたり、尿が濁っていたりすることもあります。
 結石の大きさによっては尿道が詰まり、尿道閉塞を起こし、緊急的な状態になってしまうことがあります。

膀胱結石症の診断/検査

 身体検査と触診などにはじまり、尿検査レントゲン検査超音波検査などを行います。また、状態によっては、血液検査血液化学検査、細菌培養・感受性検査、結石分析検査なども必要になります。

膀胱結石症の治療

 膀胱結石の治療には大きく分けて、現在できた膀胱結石を除去したり溶かしすること、これからできる膀胱結石を予防することが必要になります。厳密には、膀胱結石の種類により、治療も異なりますが、時には数種類の結石が混合していることも多いで厄介なこともあります。結晶の種類別の主な治療法には、
●ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)
 一般に食餌療法食で溶かせる種類の結晶なので、療法食が食べられ、結石が巨大でなく、細菌がいなければ動物病院で処方される療法食による溶解治療を行い膀胱結石を溶かします。ストルバイト結晶は、療法食で尿のpHをアルカリから中性へと下げることで、溶けていきます。結石が大きいとかつまっている、溶けないなどの場合は、外科的手術により膀胱を切開し、結石を摘出します。
 溶解や摘出した後は、予防的な観点から、維持療法食、定期的な尿検査、尿路菌感染予防などを行います。 

●シュウ酸カルシウム
 結石がシュウ酸カルシウムであれば、食餌療法食により溶かすことはできません。必要であれば、外科手術などで結石の除去を行います。その後、水分の多い食事等に変更する、カルシウムを多く含んだ食物や食餌を避ける、シュウ酸カルシウムができにくい尿環境にする食餌療法食を継続的に与えることなどを行います。
 また、定期的な尿検査や超音波検査などを継続し、結石の形成がないかを確認します。 

●尿酸アンモニウム
 尿酸アンモニウムに関しては、肝不全や門脈シャントが原因の場合は、その治療を行います。治療が難しい肝不全や遺伝が原因の場合は、再発性が高い結石です。状態にもよりますが、食餌療法食やアロプリノールという薬の投与などでコントロールしていきます。

●ケイ酸塩・シスチン
 
ケイ酸塩、シスチン尿に関しても、必要であれば外科手術で結石を摘出します。シスチンは尿がアルカリになると溶けやすいので、食餌療法食を先に行うこともあります。
 これらの結石も他の結晶と同様に水をよく飲ませることと定期的な尿検査や超音波検査、結石防止の食餌療法食を継続ます。

膀胱結石症の予防

 膀胱結石を防ぐには、結晶が尿に出ない状態を維持することが大切になります。
 尿路結石の中でも、最も多くみられるストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)は、尿のpHが高くなる(アルカリに傾く)と出やすくなります。特に食餌や細菌感染により尿のpHが高くなりますので、これらに気をつけましょう。
 結石は一度結石が大きくなってしまうと、療法食や薬で溶かすことが難しくなりますので、前述のように頻尿や血尿などが見られたら、様子をみないで早めに当院を受診してください。尿に結晶が出ている段階で治療することで、膀胱結石になることを防げる場合もあります。
 定期的に健康診断として、尿検査を行うことで、見た目ではわからない血尿や結晶尿が分かることがありますので重要です。

膀胱結石症の看護/その他

 療法食には、結晶を溶かす強度により種類があります。勝手に自己判断でネットで同じようなものを購入したりして返って状況を悪化させる方がいます。また強度が強い療法食は長期間使用しないことが望ましく、尿検査など再診で状態を見ながら種類を切り替えていく必要がありますので、獣医師の指示に従ってください。
 尿がきちんと出ているかを含め、元気や食欲、排尿の回数や量に異常がないかをしっかりと見て、異常があれば当院にご相談ください。

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参考文献・資料等
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<2>健康な猫の水分摂取および尿濃度に対する給水器の影響 
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<4>尿石症に罹患した犬における尿路感染を診断するための3つの方法の比較 
<5>ネコのストラバイト膀胱結石を溶解する市販食の効果に関する評価 
<6>犬におけるシュウ酸カルシウム結石: 外科的治療と予防方法 
<7>猫の尿道栓子と膀胱結石: 1998-2003年に提出された5,484件の再調査
<8>シュウ酸カルシウム結石を形成する傾向のある犬の検出手段としての危険因子分析および相対的過飽和状態
<9>猫の難治性特発性下部尿路疾患
<10>猫の再発性特発性膀胱炎に対する可能性ある治療法
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<12>犬における膀胱結石除去のための費用と時間に関して、腹腔鏡補助下膀胱切開術と開腹による膀胱切開術とを比較した評価研究:43例(2009-2012)
<13>尿石症の治療のための膀胱切開術後の犬の膀胱の超音波検査による評価
<14>猫の尿石症と慢性腎臓病との関連性についての評価
<15>犬の2,8ジヒドロキシアデニン尿石症
<16>膀胱切開術を受けた犬における抗生物質の術前投与の培養結果への影響 
<17>開腹または腹腔鏡下膀胱切開により膀胱結石の治療を行った犬の周術期の特徴の比較:89症例(2011年から2015年まで)
<18>猫における尿酸塩結石に関する危険因子 
<19>犬猫の膀胱および尿道結石を摘出するための経皮経膀胱的膀胱結石摘出術:27例(2006-2008年) 
<20>尿石症の低侵襲治療の新しい代替法:下部尿路結石症
<21>膀胱結石および尿道結石の犬28頭に対する電気水圧衝撃波砕石術
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<23>犬の下部尿路から尿路結石を除去するための膀胱切開術後における、不完全な尿路結石除去、合併症および診断的画像検査の頻度:128例(1994-2006)
<24>ホルミウム:犬の尿石症に対するYAGレーザー砕石術
<25>尿結石摘出法
<26>尿路結石症を発症した犬の管理に対するレーザー砕石術と膀胱切開術との比較
<27>犬の膀胱結石および尿道結石の除去のための粉砕術におけるレーザー砕石術の有効性と安全性
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<29>尿結石の内視鏡的摘出 
<30>犬猫における縫合糸由来膀胱結石に関連した危険因子の評価:176例(1999-2006)
<31>犬の尿結石の粉砕に対するレーザー砕石術の使用:73例(2005-2006)
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<33>小動物のカラードップラー超音波検査におけるTwinkling artifact について
<34>あなたの診断は何ですか?
<35>あなたの診断は何ですか?
<36>レーザー砕石術による犬の尿石症の治療
<37>17頭の犬に発生したポリープ様膀胱炎(1978-2001) 
<38>腹腔鏡を併用し膀胱鏡を利用した犬の尿道結石除去手術 

[WR2104,VQ2104:膀胱結石]

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この記事を書いた人

福山達也